クラシックジャガーの面影を漂わせる「ビュート」、クロスオーバーSUVを80年代アメ車風に仕立てた「バディ」──。独創(あるいは奇抜)なボディワークで知られる光岡自動車は、熱烈なファンがいる一方で「デザインが恥ずかしい」「なんちゃって高級車」など辛辣な声も絶えません。そこで本記事では、“恥ずかしいと言われる理由”を客観的に分析しつつ、実際の評判・スペック・リセールバリューまで一気通貫で検証。20年以上にわたり国内外の新旧モデルを取材してきた『MOTOR FAN Garage』編集長の視点で、購入前に押さえるべきリアルな注意点まで解説します。
光岡自動車とは?──“日本10番目”の小規模メーカー
1968年創業、1994年に国内10番目の乗用車メーカーとして認可。量販メーカーのシャシーとパワートレーンを流用し、レトロ感あふれる外板パネルや内装を架装する「コンプリートカー方式」を採用しています。少量生産ゆえの希少性が魅力ですが、部品の共用によりメンテナンス性と走行信頼性を確保しているのも強みです。
ネットで「恥ずかしい」と言われる3つの理由
デザインが「既視感ありすぎ」
「どこかで見たクラシックカーのコピー」だと批判されることが多く、SNSでも“パクリ疑惑”が拡散されやすい傾向があります。
価格と中身のギャップ
ベースが日産マーチやRAV4であっても、外装変更により車両本体が400万〜700万円台に達するケースも。「見た目代」に割高感を覚える層がいるのは事実です。
“キットカー”扱いされる風評
完成検査を自社で行うれっきとしたメーカーながら、「一部外注の張りぼて」イメージが根強く、クルマ好きのマウンティング対象にされがちです。
実際のオーナー/試乗者が語るメリット・デメリット
評価項目 | ポジティブな声 | ネガティブな声 |
---|---|---|
デザイン独自性 | 「街で被らない」「写真を頼まれる」 | 「悪目立ちして恥ずかしい」「内外装の質感がチープ」 |
走行性能 | ベース車の信頼性で扱いやすい | 重量増で燃費&加速がやや鈍る |
整備コスト | 日産/トヨタ系部品が使えるため安価 | 専用外板の修理費は高額・納期長 |
所有満足度 | コミュニティが濃くイベント多数 | 冷やかし目的の視線が気になる |
主な現行モデル主要スペック比較
モデル | ベース車 | 全長×全幅×全高(mm) | 価格帯(税込) | パワートレーン |
ビュート ストーリー | 日産マーチ | 3,980×1,695×1,425 | 396万〜 | 1.2L 直3 NA+CVT |
バディ | トヨタ RAV4 | 4,700×1,860×1,680 | 519万〜697万 | 2.0L NA / 2.5L HV |
ヒミコ | マツダ ロードスター | 4,575×1,740×1,235 | 598万〜 | 1.5L 直4 NA 6MT/6AT |
ロックスター | マツダ ロードスター | 4,350×1,735×1,215 | 販売終了(限定200台) | 1.5L 直4 NA |
光岡 vs 国産プレミアム車 “恥ずかしさ”の感じ方を数値化
比較指標 | 光岡 バディ | レクサス NX | 日産 フェアレディZ |
目立ち度 | 90/100(レトロSUV) | 70/100 | 85/100 |
ブランド認知 | 45/100 | 90/100 | 85/100 |
外装質感 | 70/100 | 90/100 | 88/100 |
SNS映え | 95/100 | 75/100 | 80/100 |
「恥ずかしい」口コミ率 | 34% | 8% | 15% |
リセールバリューと将来価値
- 平均残価率(5年後):光岡全体で約59%と、国産平均(48%前後)を上回る水準。特に「ビュート ストーリー」は63.9%でトップ。
- モデル別傾向:
- ビュート系:年式が古くても輸出需要があり底堅い。
- バディ:RAV4譲りの信頼性×北米チックなデザインで新車プレ値落ちが少なく、3年残価最大93%。
- 限定車ロックスター:中古相場は新車比130%超となる個体も。
- 注意点:外板ダメージはパネル交換が基本で修復歴扱いになりやすく、事故車の評価は急落します。
購入前チェックリスト
1. 試乗は「夜間」も行う
昼と夜で存在感(=恥ずかしさ)の感じ方が大きく異なるため。
2. 塗装色とエンブレム位置を確認
クラシック調エンブレムは賛否を分けるポイント。
3. 修理拠点の把握
大規模ディーラー網はないため、事故対応は代理店or本社送り。
4. ローン残価設定
残価設定ローンを選ぶと出口リスクを抑えられる。
よくある質問
Q. 車検や点検は普通のディーラーで受けられる?
A. ベース車が日産やトヨタなので基本整備は可能。ただし外装パーツは光岡本社手配となります。
Q. 保険料は高い?
A. 型式はベース車と同じため料率クラスは通常。車両保険は特別扱いになるケースがあるので要見積り。
Q. 海外輸出はできる?
A. 北米・中東で人気があり、輸出業者の買取事例も多数。限定車は高額落札が見込めます。
Q. 売却時に査定は付く?
A. 流通量が少ないため専門店の方が高値。全国オークション相場を把握する業者選びが重要です。
筆者の感想
これまで数百台の試乗を重ねてきましたが、光岡ほど「乗る人の覚悟」を問うブランドは稀です。実車を前にすると、確かに樹脂バンパーのチリやメッキの質感に国産プレミアムとの差はあります。しかし、その突き抜けた個性こそが価値。恥ずかしさを恐れず振り切れた人だけが得られる所有満足が存在することもまた事実です。
まとめ
- “恥ずかしい”と感じるかは、デザインと周囲の視線に対する耐性次第。
- 評判は極端に割れるが、残価率は国産平均超えで資産性は意外に悪くない。
- 購入前に修理体制と出口戦略を確認すれば、光岡は“唯一無二の相棒”になる。
あなたの価値観に合致するなら、次の愛車候補として胸を張って検討してみてください。